多様性からシナジーを生み出すエニアグラムの力

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I=多様性の受容)という言葉に出会い、強い衝撃を受けたのは20年以上前のこと。当時勤めていた女性を支援するNPOで、女性政策や雇用政策の取組みを見て歩く視察旅行を企画し、NY、ダラス、シカゴの大手企業を訪問しました。人事担当役員が口をそろえて言っていたのが「組織の多様性を活かすダイバーシティマネジメント」の重要性です。

組織はすでに多様化している。そうであるならば、多様な社員について「法律があるからやる」とか「差別をなくす」という「守り」のマネジメントではなく、「多様性を競争優位に活かす」、「「違いがあるからこそ、それが力になる」という、「攻め」のマネジメントに取り組み、個人の成長と組織の成果につなげる。

それがダイバーシティ経営の考え方であり、素晴らしい結果を出していました。そのことに強いインパクトを受けた私は、それ以来一貫して組織のダイバーシティ推進の支援を行っています。しかし「多様性を力に変える」ことは、まさに言うは易し行うは難し。特に管理職にとって、多様な属性の部下をマネジメントし成果につなげることは容易ではありません。性別や年齢、国籍、障害の有無のみならず、価値観やアイデア、発想、キャリア志向、ライフスタイルといった目に見えない違いをどのように活かしていくのか。直面する部下との関係において、面倒さや大変さばかりに目が向き、多様性から価値を生み出す、とか、シナジー(相乗効果)を発揮させる、というポジティブな効果はなかなか想像しづらいのが現実です。

 

どのような手法やメソッドを活用すれば、多様性のメリットや効果を体感してもらえるのか、ということを考える中で出会ったのが「エニアグラム」です。

自分や相手の性格や思考・行動パターンを深く理解することで、一歩踏み込んだ質の高いコミュニケーションが可能となるのです。

ダイバーシティ推進における、マネジメントする側・される側、という対立的な関係性をいったん横に置き、だれもが組織の多様性の一部である、という視点にたって、自分を知る(自己理解・認知・受容)、相手を知る(他者理解・尊重・受容)ことから、固定化されたその関係性を解きほぐし、新たな関係性を再構築し、多様性のダイナミズムを生み出す。エニアグラムにはその効果があると実感しました。

 

忘れられない研修があります。ある大手メーカーでの女性リーダー育成研修プロジェクトでの出来事。30名近い管理職候補の女性が集められ半年間のアクションラーニング研修を実施しました。多くの女性たちは、多少の濃淡はあれ上司との関係はおおむね良好で、研修にも意欲的でした。ところがある女性社員だけは終始表情が硬く、研修期間中に上司と個別面談があると言うと、
「最悪の上司です。あの上司の下では働きたくない。期待も評価もされていないのに、なぜこの研修を受けなければならないのか。」
と言い放ったのです。

女性のリーダーシップ開発には、現場での一皮むける経験と貢献に対する適切な評価や承認が不可欠であり、部下を支援する上司の存在は極めて重要です。上司との関係性に問題を抱えている場合、研修での学びや効果が薄れることがあります。

まずは、自分が成長するためにこの研修を活用してほしいと伝え、急きょエニアグラムのセッションを通常よりも長めに取りました。同じタイプ同士で価値観を共有したり、タイプの異なるメンバーとの会話を通して、ものの見方やとらえ方、考え方、感情表出の違いなどの理解を深めました。また、自分の特徴的な強みや弱みの活かし方を学び、メンバー相互による丁寧なフィードバックワークを行いました。最初は上司の悪口や会社のへの不満ばかりに終始していた彼女も、次第に本来の自分を取り戻し、落ち着いた表情になっていきました。そして、最後に
「今まで上司の良くない面ばかりに目が向いていましたが、エニアグラムを知り『ああ、だから上司はああいう思考や行動をするんだな』と深く理解できました。私のタイプが持つ特徴も、上司に影響を与えていたんですね。なんだかもやもやしていたことがすっきりしました。まあ、だからと言ってすぐに関係が変わるとは思いませんけどね(笑)」
と話してくれました。

 

続いて行われた上司向けの研修。「部下から嫌われている上司とはどんな人?」注目をしていたその方は、当たり前ですが拍子抜けするほど普通の人。ただ、部下のマネジメントについてはやはり悩みを抱えているようでした。

同様に研修の中にエニアグラムセッションを取りいれ、部下のタイプも伝え、関わり方の傾向や動機付けの課題などを話し合いました。それとなく、その上司に感想をきくと、
「部下との関係はある意味あきらめていたけれど、お互いのタイプを知るとなぜ食い違うのかがよく理解できました。なによりも自分の思考・行動パターンが理解できたことが一番の成果ですね。部下への指導の仕方や自分のストレスマネジメントの課題がよくわかりました」
と明るい表情で語ってくれました。

 

上司・部下合同の研修では、ワールドカフェという対話の技法を用いざっくばらんな意見交換を行いました。硬い表情だった上司・部下も、他部署の女性や上司と楽しそうに話をしていました。最後は上司・部下のペア面談です。お互い最初はぎこちない雰囲気でしたが、エニアグラムの話題をきっかけに一気に話が弾み始めました。なぜ、自分はこう思うのか。仕事をする上で何が大事なのか、自分の強みや弱みは何なのか。お互いが一歩踏み込んで相手を理解しようという態度をとることで、お互いを遮っていた見えない壁が崩れていったのでした。自分の本質を知ることで人間的な成長を促進します。さらに、相手を深く理解することで、お互いの違いを受容・尊重しようという気持ちが生まれます。エニアグラムにより、関係性に小さな変化を生み出すことが可能となります。この小さな変化こそが、大きな変革の源でもあるのです。

ダイバーシティマネジメントという抽象的な言葉ではなく、目の前の一人の部下の力をどう引き出し、どのように本人の成長と組織の成果に結びつけていくのか。ダイバーシティのシナジーは、一人ひとりの内面の変容と関係性の変化から生み出されるのです。

 

ビジネスエニアグラムとは、個と組織の “成長と成熟のプロセス”にエニアグラムを活用することをいいます。また私たち、ビジネスエニアグラム協会(BEA)は、主に組織の“成長と成熟のプロセス”をサポートし、個と組織の幸せに貢献することを目的としています。

 

キーワードは、「シナジーメイキング」

 

違いは間違いではない、価値の源泉であるととらえ、エニアグラムにより「個人の人間的成熟(自己理解、自己受容、自己統合)」を図り、チームメンバー間に「良質の関係性(相互理解、相互受容・尊重、相互信頼関係)」を構築し、最終的に組織のシナジーメイキング(相乗効果による成果)を生み出していく。それがBEAのめざす姿です。

 

変化が激しく、多様性にあふれ、複雑で曖昧、不確実性の増す時代。企業においては、その違いを受け入れ活かし、強みに変え、シナジー(相乗効果)を生み出すことがますます求められています。

D&I経営を目ざす企業において、その成果を生み出すためにこれからも様々な場面で、ビジネスエニアグラムのプログラムを提供していきます。ご関心のある方は、ぜひ協会のセミナーや各種活動にご参加ください。

(理事 荒金雅子)

 

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